萩・長門・下関をつなぐ、物語を巡る列車◯◯のはなし萩・長門・下関をつなぐ、物語を巡る列車◯◯のはなし

SIDE STORY04

「アテンダント」の声を聞く。

声を届け
旅を導く

萩(は)・長門(な)・下関(し)を結ぶ海沿いのルートを走る観光列車「〇〇のはなし」。日本海から響灘、瀬戸内海へと移ろうその景色を、毎日見つめ続けている人がいます。広々とした水平線や寄せる波の気配、光によって変わる海の色。その時々の表情が、旅の印象を静かに彩っています。

車内には、地域のはなしを乗客へそっと手渡すアテンダントがいます。沿線の景色や文化、歴史を伝える車内放送。その土地ならではの味を揃える販売カウンター。ふと交わす会話――。そのひと言や風景が、やがて「自分だけのはなし」へと育っていきます。

乗客が育むはなしのそばに寄り添うアテンダントは、この列車をどのように見つめているのでしょうか。アテンダントが紡ぐ、もう一つの〇〇のはなしに迫ります。

取材時に旅を支えていた、アテンダントのお二人

出会いを力に、車内を支える。

アテンダントが担う業務は幅広い。指定席券の確認、沿線のお菓子やお酒、オリジナルグッズなどを扱う車内販売、記念撮影の声がけ、ビュースポットや沿線案内を交えた車内放送。乗客がそれぞれの旅を心地良く楽しめるよう、乗客一人ひとりの様子に、さりげなく心を配っている。

現在は4名のアテンダントが所属し、基本は2名体制で乗務している。この職に就いた理由は実に多様だ。列車旅が好きで、広島の「etSETOra」をはじめ、九州や沖縄などのさまざまな列車に乗るうちに、「観光列車に携わりたい」と思い始めた人。接客の仕事を探す中で観光列車という存在を知り、「面白そう」と飛び込んだ人。

共通しているのは、人とのやり取りに喜びを感じること。乗客との何気ない会話や、ふと返ってくる「ありがとう」の言葉。その一つひとつが、アテンダントの原動力になっている。

停車駅で生まれる、ほんのひとときの会話も旅の彩り

土地を語り、はなしをひらく。

車窓に広がる美しい海景も、アテンダントがこの列車に立ち続けたいと思う理由の一つだ。何度も同じ区間を走るが、同じ景色に出会うことはない。特に印象深いのが、冬と夏。冬は澄んだ空気の中で、夕陽が海に沈む瞬間が際立つ。夏は海の青さが深まり、陽光を受けて水面が鮮やかに揺れる。

こうした景色を存分に楽しめるよう、車内の設えにも工夫が凝らされている。1号車では、海側に大きな窓が並び、車窓いっぱいに広がる海景をダイナミックに堪能できる。一方で、山側の窓は額縁のように景色を切り取り、山肌や家並みが一枚の絵のように立ち上がる。2号車は照明を落とした落ち着いた空間で、お酒を味わいながら「車内越しに反対側の景色を見る」という、少し引いた視点での楽しみ方も広がっていく。

沿線には、旅を深めてくれる観光名所も点在している。萩の城下町では、江戸時代の町筋が残り、静かな時間が流れている。長門の元乃隅神社では、123基の赤い鳥居が青い日本海と重なり、鮮烈な印象を残す。下関では、コバルトブルーの海に伸びる角島大橋が雄大な姿を現す。アテンダントは車内放送を通じて、こうした観光名所の背景や見どころを伝えている。単に景色を眺めるだけでは捉えきれない「土地のはなし」が、アテンダントの言葉を通じて静かにひらいていく。

2号車の販売カウンターに立ち、旅の時間を支えるアテンダント

地域を結び、旅を深める。

アテンダントが担当する車内販売も、この列車ならではの魅力だ。2号車の販売カウンターには、地域の事業者が手がけたおつまみやお菓子、お酒、記念に手に取りたくなるオリジナルグッズなどが並び、旅の時間に小さな彩りを添えている。

事前予約で味わえる食事も旅の特別感を高める。下関の老舗料亭が仕上げたお弁当、酒造による日本酒とピクルスのセット、萩の洋菓子店が手がけたスイーツセットなど、沿線それぞれの土地が培ってきた味わいが揃う。

事前予約品の一つである「Agawaお米サンドBOX」を提供しているのが、阿川駅にひらくキオスク「Agawa」だ。阿川駅では停車時間中に、アテンダントが同店からこのお米サンドBOXを受け取り、列車出発後、車内で乗客へと手渡している。

一方で、停車時間には乗客自身がAgawaに立ち寄り、ドリンクやオリジナルグッズなどを購入する姿も見られる。店のスタッフからは「事前の車内放送のおかげで興味を持ってもらえる」と感謝の声が上がっているという。車内での案内が旅を彩るだけでなく、地域との接点を生み出していることは、アテンダントにとって大きな励みとなっている。

〇〇のはなしは、乗車・指定席券料金が手頃で、気負わずに旅を楽しめる観光列車だ。広くひらかれた入り口の先に、絶景があり、人の営みがある。それらと乗客の間を結びながら、今日もアテンダントは車内に立つ。乗客が受け取る一つひとつの地域のはなし。そのそばには、「アテンダントのはなし」が静かに重なっている。

萩・長門・下関をつなぐ、物語を巡る列車◯◯のはなし
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萩・長門・下関をつなぐ、物語を巡る列車◯◯のはなし
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人、まち、社会の
つながりを進化させ、
心を動かす。
未来を動かす。