SIDE STORY02
「事業者」が込めた思いに触れる。
etSETOraの車内で、箱をそっと開く時間があります。窓の外に瀬戸内の景色が流れるなか、旅の合間に添えられるのが、スイーツシリーズ「瀬戸の小箱」です。広島の菓子店やホテル、チョコレート専門店が腕を振るい、列車の時間に寄り添う味わいを届けています。
往路では和菓子・洋生菓子・スイーツ&セイボリーの3セットを、復路ではチョコレート・焼き菓子の2セットを用意しています。事前予約で、その日の旅の気分に合うひと箱を選ぶことができます。
このうち、往路で味わえる洋生菓子セット「瀬戸の小箱~洋~」を手がけているのが、広島市内に本社を構える有限会社カスターニャです。カヌレや冷凍焼きプリン、チーズケーキなど、多彩な洋菓子を、素材にこだわり一つ一つ丁寧に手づくりしています。広島市東区福田にある直営店をはじめ、JR広島駅直結の「minamoa」、さらに「立町カヌレ」として広島市内や東京など県外にも店舗を展開しています。
今回は、代表取締役の竹村崇さんに、「瀬戸の小箱~洋~」の魅力や開発ストーリー、そして今後の展開についてお話を伺いました。
カスターニャの代表取締役・竹村さん
「瀬戸の小箱~洋~」は、旅の途中で少しずつ味わうことを前提に、広島の美味しさをぎゅっと詰め込んだ3品で構成されている。
箱の中央に収められているのが、「瀬戸内の柑橘ケーキ」だ。広島レモンを使ったチーズケーキをベースに、瀬戸内産はっさくの果実を、安芸津産じゃぼん、レモン、はっさくなどで仕立てたムースで包み込んでいる。
さらに一番上には、広島産せとかの果肉ソースをあしらった生クリームを重ね、一口ごとに柑橘の爽やかな酸味とクリームの濃厚さが折り重なる。広島柑橘の魅力を存分に楽しめる一品だ。
箱の右側に納められているのが、「三次のピオーネゼリー」。三次産ピオーネの果実を中央に据え、ライチゼリーと三次ワインゼリーの2層で仕立てている。斜めに重なる透明感のある層が美しく、見た目にも涼やかだ。上には広島レモンピールと大崎上島産ブルーベリーをあしらい、爽やかな酸味と果実の甘みが口の中で広がる。
箱の左側に納められているのが、「世羅産ナッツのチョコレートケーキ」。世羅産ナッツを使ったショコラベースに濃厚なチョコレートムースを重ね、中にはカスターニャ自慢の冷凍焼きプリン「カタラーナ」を忍ばせている。ナッツの香ばしさとチョコレートの深いコク、そしてカタラーナのなめらかな食感が重なり、奥行きのある味わいがゆっくりと余韻を残す。
洋生菓子セット「瀬戸の小箱~洋~」
竹村さんがおすすめするのは、食べる順番を意識して味わうこと。
まずは、「瀬戸内の柑橘ケーキ」から。爽やかな酸味で口を整えたあと、お口直しも兼ねて軽やかな「三次のピオーネゼリー」を味わう。そして最後に、一番濃厚な「世羅産ナッツのチョコレートケーキ」へと進む。
いずれも、急いで食べるのではなく、車窓の景色を眺めながら少しずつ味わいたくなる。
移りゆく風景とともに、味わいの重なりを楽しむことで、「瀬戸の小箱~洋~」は単なるスイーツではなく、etSETOraの旅の時間に寄り添う存在として完成する。贅沢なひとときを、静かに演出するひと箱だ。
チョコレートケーキの製造の様子
これら3品は、JR西日本広島支社から、etSETOraという列車の時間に合うスイーツをつくってほしい、という提案を受け、カスターニャが開発したものだ。それまでカスターニャではカヌレなどの焼き菓子を中心に展開しており、洋生菓子の経験がまだ浅い段階での依頼だった。しかし、竹村さんは「これは大きなチャンスだ」と感じたという。瀬戸内の風景に寄り添うスイーツを目指し、広島の美味しい食材を詰め込むことをテーマに、製造チームとともに試作を重ねた。
こうして誕生した「瀬戸の小箱~洋~」は、カスターニャに新しい風をもたらした。提供開始後、お客様から「生ケーキもつくれるんですね」という声が増え、職人たちの技術向上や意気込みにつながったという。
いちごケーキやモンブランといった洋生菓子が次々生み出され、2024年には、広島市内に洋生菓子を販売する直営店「洋菓子カスターニャ福田本店」もオープンした。「瀬戸の小箱~洋~」という挑戦がきっかけとなり、カスターニャの物語は、また新たな一章を描き始めている。
洋菓子カスターニャ 福田本店
2020年のetSETOra運行開始から、「瀬戸の小箱~洋~」は変わらぬ美味しさで旅を彩り続けている。今後は、広島の新たな食材を使ってアレンジを加え、旅にさらなる楽しみを添えていきたいという。食材は、生産組合や農家から直接調達することも考えている。生産者とのつながりを大切にしながら、地域が盛り上がるようなコラボレーションをしていきたい考えだ。
最後に、竹村さんに「瀬戸の小箱~洋~」を手にする方へのメッセージを尋ねると、「広島の果実やナッツをふんだんに使い、心を込めてつくりました。瀬戸内海の美しい景色とともに味わえば、豊かな旅の時間を過ごしていただけると思います」と笑顔で答えてくれた。その言葉には、「美味しいスイーツを届けたい」というつくり手の熱意と、広島へのまっすぐな思いがにじんでいた。
「瀬戸の小箱~洋~」は、旅のひとときに贅沢な体験を演出してくれる特別なセット。広島市内の「洋菓子カスターニャ福田本店」やJR広島駅直結の「カスターニャminamoa店」では、同じ食材や技術を生かした洋生菓子がそろう。帰りに立ち寄り、旅の余韻を日常へと持ち帰るのも、このひと箱の楽しみ方のひとつだ。
人、まち、社会の
つながりを進化させ、
心を動かす。
未来を動かす。