長門市/山口

長門の地で育てる
鶏と向き合い続ける
地域を支える養鶏

長門市/山口

末永 明典_深川養鶏

2026.07.15

山口県長門市に本部を置く深川養鶏農業協同組合は、海と山に恵まれたこの地の穏やかな環境のなかで、鶏の健康に配慮した飼育を続けながら、山口県内を中心に、品質にこだわった鶏肉を提供してきました。

鶏の飼育から加工、販売までを一貫して手がける体制や、抗生物質・合成抗菌剤に頼らない飼料設計に加え、地域資源を生かした循環型農業にも取り組んでいます。

代表理事組合長の末永明典さんに、組合の歩みと現在の取り組み、そして今後の展望について伺いました。

地域と養鶏への思いを語る、代表の末永さん

力を合わせて一貫生産へ

深川養鶏の始まりは、戦後間もない1948年にさかのぼる。末永さんの祖父の呼びかけに応じて、戦前に長門で鶏卵生産を営んでいた農家たちが集まり、設立された。当時の社会では、安定した食糧供給、とりわけ動物性たんぱく質の確保が求められていた。その需要に応えるべく、農家同士が力を持ち寄り、鶏肉生産に取り組む組織として動き出す。

長門に隣接する仙崎では、古くからかまぼこづくりが盛んで、製造工程で出る魚のアラを飼料として利用できた。こうした環境も手伝い、事業は着実に広がっていく。

また、成長を支える大きな要因として、種鶏(親鶏)の飼育から雛の供給、組合員による育成、加工、販売までをつなぐ一貫体制に取り組んだこともあった。「私たちは、生産から加工、販売までを一貫して手がける体制で成長してきました。こうした体制は組合の設立当時はもちろん、現在でも珍しいと思います」と末永さんは話す。工程ごとに分業する場合と比べてコストを抑えやすく、リーズナブルな価格での提供を可能にしてきた。さらに、雛がどのように育ち、いつ製品となったかをたどりやすいため、品質や安全性の面でも安心感につながっている。

加えて、1997年からは、飼料に抗生物質・合成抗菌剤を使用しない取り組みにも着手。飼料設計を見直しながら、薬に頼らず雛を育てる体制を整え、より安心して食べられる鶏肉づくりにつなげている。

薬に頼らない飼料で育てられる「長州どり」

無理をかけずに育てる

深川養鶏の代表的なブランドが、「長州どり」と「長州黒かしわ」だ。

長州どりの特徴の一つは、飼料へのこだわりにある。原料となる穀物から選別し、タイム、セージ、ローズマリー、ローレル、オレガノの5種類のハーブをブレンドすることで、抗生物質・合成抗菌剤を使わない飼料を実現している。飼育はケージではなく自由に動き回れる平飼いでおこなわれ、運動量を確保することで引き締まった肉質になるという。臭みが少なく、淡白ですっきりとした味わいは、さまざまな家庭料理にも合わせやすい。

一方の長州黒かしわは、天然記念物「黒柏鶏(くろかしわ)」の血を引く、山口県オリジナルの地鶏だ。飼料は長州どりの設計をベースにしながら、自家配合されている。こちらも平飼いで育てられ、1平方メートルあたり7羽前後という環境のもと、約80~100日かけてじっくりと飼育される。一般的なブロイラーよりも長い時間をかけて育てることで、肉質を高めているという。地鶏らしい適度な歯応えを持ちながらも、硬くなりすぎないのも特徴だ。

どちらにも共通するのは、飼料や飼育方法を含めた丁寧な管理の積み重ね。長門近郊の穏やかな環境のなかで、鶏に無理をかけずに育てる。その姿勢が、深川養鶏が生産する鶏肉の個性につながっている。

山口県オリジナル地鶏「長州黒かしわ」

資源を生かす循環型農業

深川養鶏では、鶏肉の生産だけでなく、加工品づくりにも取り組んできた。唐揚げや焼き鳥などの商品に加え、鶏卵せんべいやバームクーヘン、マドレーヌといった菓子類まで、そのラインナップは幅広い。加工品づくりの背景にあるのは、「捨てずに生かす」という発想だ。精肉として販売しにくい形の肉や、雛にならない小さな卵などを活用し、新たな商品へとつなげてきた。養鶏の現場で生まれる資源をできる限り使い切ることが、加工事業の出発点となっている。

この考え方は、深川養鶏が大切にしてきた循環型農業の仕組みにもつながっている。養鶏場から出る鶏糞は堆肥化され、地域の農家で使われる。その堆肥で育った飼料用米が鶏の餌となり、鶏肉の生産へと還っていく。

「循環型農業は地域の農家を支え、私たちの鶏肉づくりの土台にもなっています」と末永さん。地域のなかで資源を無駄なく生かしながら、次の生産へとつなげていく。こうした循環の仕組みは、創業期から地域資源を有効活用してきた深川養鶏の姿勢にも通じている。

深川養鶏が手がける、鶏卵を使った多彩な加工商品

食と暮らしを支え続ける

現在、深川養鶏の鶏肉や加工品は、山口県内を中心とするスーパーや自社オンラインショップなどで販売されている。菓子類は長門の製菓工場に併設されたふかわ養鶏直売店「トリーネふかわ」でも取り扱い中。店内ではドリンクやソフトクリームなども提供され、イートインスペースで楽しむこともできる。

今後は、一般消費者に向けた商品開発やオンライン販売により一層力を入れ、加工事業のさらなる拡大をめざしていく考えだ。また、循環型農業の取り組みを継続しながら、地域の農業を支え、安全・安心な鶏肉の提供を続けていきたいという。

長門市は、人口1万人あたりの焼き鳥店舗数が全国でもトップクラスとされ、「焼き鳥のまち」とも呼ばれている。「その背景の一端を担ってきたと考えています」と末永さんは話す。焼き鳥は素材そのものの味わいが際立つ調理法であり、肉質や鮮度が仕上がりに表れやすい。飼育から加工、販売までを一貫して手がけることで、品質や鮮度を保った鶏肉を安定して届けられることも、こうした食文化を支える一つの要素になっているという。

地域のなかで育てられた鶏が、加工され、食卓や店先へと届けられる。その過程で生まれる資源は、再び次の生産へとつながっていく。深川養鶏の取り組みは、単に鶏肉を供給するだけでなく、地域の暮らしや食文化を支えながら、これからも続いていく。

深川養鶏の魅力がそろう直売店「トリーネふかわ」

トリーネふかわ

〒759-4101 山口県長門市東深川707-1 地図を見る

TEL/0837-22-2123
営業時間/8:00~17:00
店休日/水・日曜日

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