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ご当地コッペパンを
地方の魅力を伝えるツールに。
「やまのわ」のかつてない挑戦

山口市/山口

山田 豊佳_株式会社 やまのわ

2024.03.12

山口県山口市小郡にて県内の食材や特産品を使ったコッペパンを製造・販売している「株式会社 やまのわ」。これまでに山口県の魅力が詰まった400品目以上の「ご当地コッペパン」を手掛けてきました。製造を担うのは委託を受けた障がい者支援施設の人たち。最大5工程までに抑えた手順書をもとに次々とユニークな商品が仕上がります。

完成したパンは新山口駅から車で3分ほどのスーパーマーケット内に併設された「サビエル&やまのわ アルク小郡店」に並びます。加えてパンのお取り寄せ・通販サイト「JR DISCOVER WEST MALL」や「rebake(リベイク)」などを通じて全国に届けられていきます。

ご当地コッペパンは「地方を発信するためのツール」と語ってくれたのは、やまのわの代表取締役を務める山田豊佳さん。コッペパンを地方の魅力を伝える一手段として活用するとは驚きですが、このようなモデルを構築するまでにはどのような経緯があったのでしょうか。今後の展望も含めてお話を伺いました。

地方の魅力を伝える「ご当地コッペパン」

「食」を通じて地方貢献を

前職でマーケティングを担い、地方の疲弊を目の当たりにしてきたという豊佳さん。同時に地方の可能性を感じ「チャンスメイクさえすれば何か生み出せるのではないか」と考えるようになった。行動を起こすならば地方に貢献できることがしたい。ゼロベースで思案するうちに行きついたのが「食」という切り口だった。

東京を離れて山口に移住してきたのは2018(平成30)年のこと。5歳で引っ越したために身内や知り合いはいなかったが「食で地方を発信する」というテーマを形にしたいと選んだのは生まれ故郷である山口だった。アピールしたい食材・特産品はどこの地方にもある。しかし、アンテナショップやWebだけでは実際の味を伝えることが難しい。試食のような気軽さで地方の食を口にしてもらえたら。そのような考えがご当地コッペパンの誕生につながる。

山口市内の田園風景

コッペパンの汎用性に着目

コッペパンを選んだ理由はいくつかあるが「なんでもあり」なところが決め手となった。何を挟んでもいいし、挟むものによって菓子パンにも惣菜パンにもなる。片手で食べられる気軽さや具材が目立つビジュアルも発信ツールに向いている。また、醬油や塩などのご当地調味料を上からかけられる点も良かった。まずはコッペパンで味を確認してもらい、そこから口に合うものを見つけて地方の食に興味を持ってもらおうというわけだ。

当初よりご当地コッペパンのモデルを全国に拡散していきたいと考えていたため、特別な技術を要さずに作れるパンということも重要だった。折しも世間ではコッペパンブームが起きており、汎用性・自由度が共に高いことからコッペパンを採用するに至った。

やまのわが運営する「サビエル&やまのわ アルク小郡店」店内

山口県各市の特産品を使用

2019(令和元)年6月には山口市の商店街に妻・公美子さんと「特産café やまのわ」をオープン。翌年12月に現在の場所へ移転するまで毎週のように新商品を発売する試行錯誤の日々が続いた。豊佳さんがアイデアを出して公美子さんが実際的な商品開発を担う。それまでのキャリアで弁当開発のノウハウを培ってきた公美子さんの存在は、やまのわに欠かせない。

現在販売しているのは「食べて知って行きたくなるコッペ 6市町×1種セット」だ。下関市・長門市・周南市・山口市・岩国市・萩市という山口県各市の特産品を6種のコッペパンに仕上げてセットにした。豊佳さんが「もっと日本中に広がってもいいのに」と感じている優れた食材の数々をまとめて味わえる。

社会貢献型商品として

障がい者支援施設に製造を依頼していることもまた、やまのわが展開する事業の特徴だ。ご当地コッペパンは障がい者の工賃獲得に寄与する商品となっている。購入者側もコッペパンを食べることにより、障がい者支援という形で社会に貢献できる。

障がい者支援施設のみならず学生たちともタッグを組んでアクションを起こしている。少子化対策を念頭に子どもたちにも目を向ける。やまのわのコッペパンは地方を発信するためのツールであり、社会問題を解決するための一手段。コッペパンの向こうに山田さん夫妻のぶれない思いが垣間見える。

やまのわの「輪」を山口から全国へ

コッペパンの製造・販売を経て「株式会社 やまのわ」を設立したのは2021(令和3)年11月のことだ。社名の「やま」は山口県を指している。やまのわを通して山口県の「輪」が広がり、やがて人々を固い絆で結ぶ「環」になる。そして、最後には「和」になっていく。会社のロゴも一筆書きで結びつきを感じられるものにした。

豊佳さんは今後やまのわの「輪」を全国に広げていきたいと考えている。やまのわのビジネスモデルがアプローチする問題はどの地方にも共通しているためだ。山田さん夫妻がゼロから実績を示してきた、コッペパンを通じて地方を発信するという手法。前例のない取組がこれからどのように展開するのか目が離せない。

熱い思いを語る、豊佳さん

深めた知見でアイデアを形に

やまのわの取締役を務める公美子さん。夫・豊佳さんの事業を起こしたいという思いを尊重し、生まれ育った東京から山口へ移住してきた。中級食品表示診断士、野菜ソムリエ、一級惣菜管理士の資格を保有。その確かな知識を生かしながら豊佳さんのアイデアを実際的な事業・商品に落とし込む。

特に好きな山口の食材は「美東ごぼう」。豊佳さんと共に出かけてさまざまな農作物に触れるなか、初めて口にして「これほど柔らかく、くせのないごぼうがあるのか」と驚いた。なお、公美子さんお気に入りの美東ごぼうは「食べて知って行きたくなるコッペ 6市町×1種セット」の「長州どりのチキンチキンごぼうコッペ」で味わうことができる。

「自分の作ったものが届いて美味しいというフィードバックがある。それが何よりも嬉しい」という公美子さん。これからも豊佳さんと二人三脚で、やまのわを盛り立てる。

株式会社 やまのわ 取締役 山田 公美子さん(アルク小郡店の駐車場にて)

サビエル&やまのわ アルク小郡店

〒754-0002 山口県山口市小郡下郷2273-1 地図を見る

TEL/083-973-1845
営業時間/9:00~16:00

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