長府毛利藩五万石の栄華が偲ばれる、風情豊かな町並みが印象的な「城下町長府」。江戸時代の土壁や石垣が続く小路を進んでいくと、長府駅から車で7分ほどの場所に、「TAKADA COFFEE」の本店が店を構えています。TAKADA COFFEEは1987年の創業以来、「ホッとする癒しの空間のお手伝いを大切に」という思いを軸に据えて、下関市を中心に展開するコーヒーショップです。世界各国の農園を巡って直接買い付けた、高品質なスペシャルティコーヒーを提供しています。

本店を前にしてまず目を見張るのは、その重厚な門構え。TAKADA COFFEE本店は、毛利家の家臣として長府にゆかりをもつ福原家(ふくばらけ)が代々守り継いできた武家屋敷を活用した「武家屋敷カフェ」です。江戸時代の建築様式と、明治以降に福原家が施した改築が今も息づき、当時の暮らしを感じられる特別な空間となっています。

店内で提供されるのは、専務取締役を務める東竜(あずまりょう)さんが買い付けと焙煎を一手に担ったスペシャルティコーヒーや、コーヒーに合う自家製スイーツの数々。カフェに併設されたスイーツ&ギフトショップ「SOU/ZAEMON」に並ぶ商品も見逃せません。今回は武家屋敷カフェと、そこで出会える商品の魅力についてご紹介します。

地域の宝である武家屋敷を再生

喫茶スペースと焙煎機を備えた、街の小さな珈琲屋として歩み始めたTAKADA COFFEE。下関市の別の場所で営業を続ける中、長府侍町に佇むこの武家屋敷が、かつて毛利家家臣の福原家によって大切に受け継がれてきた建物だと知ったという。しかし、ご子息の代となり継承が難しく、取り壊される可能性も浮上していた。

縁あって屋敷を訪れた東さんは、「福原家が残してきた歴史と思いを絶やしてはならない」と感じ、継承を引き受ける決意を固めた。コーヒーショップとしてだけでなく、「人々がふと立ち寄って笑顔を交わす場所」を地域に作りたいという思いも、背中を押したのだという。

こうした経緯があって2019年に生まれた、「SOU/ZAEMON by TAKADA COFFEE 武家屋敷本店」。過剰に手を加えることは避け、日本家屋ならではの落ち着いた雰囲気に包まれながらコーヒーを楽しめるようにした。靴を脱いで畳の上でコーヒーを頂くという特別な体験。幅広い年代の人々が訪れ、まさしく「ホッとする癒しの空間」に身を寄せているという。

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珈琲屋ならではのこだわりメニュー

武家屋敷カフェではお客様の好みに合わせてさまざまな種類のコーヒーが振る舞われているが、創業時から愛され続ける定番のブレンドコーヒーは「1987ハウスブレンド」だ。中深煎りのコーヒーで、豊かな香りい深いコクが楽しめる、バランスのよい味わいが特徴。どのコーヒーにするか迷ったら、まずはこちらを注文してみてもいいだろう。

あわせて楽しみたいのが、コーヒーに合うスイーツとして開発された「珈琲屋のチーズケーキ」。クリーミーで濃厚な味わいは、「一度食べたら忘れられない」と人気を博している。TAKADA COFFEEはこのほかにも、コーヒーの美味しさが引き立つさまざまな自家製スイーツを提案。季節ごとに登場する限定商品も要チェックだ。

1987ハウスブレンドをはじめとするスペシャルティコーヒーや珈琲屋のチーズケーキは、「TAKADA COFFEE ONLINE STORE」を通じても買い求めることが可能。東さん厳選の味を、まずはご自宅で味わってみてほしい。

コーヒーによってつなぐ過去と未来

カフェ併設のスイーツ&ギフトショップ「SOU/ZAEMON」に目を移すと、TAKADA COFFEEならではの「物語のある商品」が販売されている。今回ピックアップするのは、「旅とコーヒー」と銘打ったドリップコーヒーバッグシリーズだ。山口県の風景をあしらったオリジナルデザインが採用されており、お土産にも最適。旅の思い出と余韻をコーヒーと共に堪能できるアイテムとなっている。現在販売されている旅とコーヒーの「山口ブレンド」は、後味が明るくスッキリした印象の一杯で、フローラルでしっかりした果実味の甘さが特徴。山口県の魅力をより広く発信すべく、クラウドファンディングを活用した新商品の企画も進行中という。

なお、SOU/ZAEMONというワードは、東家の御先祖である初代東荘左衛門の名前を拝借したものなのだとか。過去の歴史と未来が交錯するかのような印象に仕上がっている点が、創業時の味を守りながらも新たな挑戦を続けるTAKADA COFFEEの姿勢と重なって見える。

曜日を問わず、県内外、また海外からも大勢の人が訪れるという「SOU/ZAEMON by TAKADA COFFEE 武家屋敷本店」。その賑わいは、福原家が長く守り続けてきた屋敷の価値と、TAKADA COFFEEが未来へつなぐ意志が重なった結果といえるだろう。