下関市/山口

世界の農園と日々向き合い
丁寧に焙煎した一粒の力で
人と文化と未来をつなぐ

下関市/山口

東 竜_TAKADA COFFEE

2025.12.10

世界各国の農園を巡って直接買い付けた、高品質なスペシャルティコーヒーを提供する「TAKADA COFFEE」。1987年の創業以来、「ホッとする癒しの空間のお手伝いを大切に」という変わらぬ思いを軸に据えて、下関市を中心に展開するコーヒーショップです。コーヒーの買い付けや焙煎を担うのは、専務取締役を務める東竜(あずまりょう)さん。日本スペシャルティコーヒー協会の認定審査員として、海外で開催されるハンドドリップの競技会などにも赴いています。

TAKADA COFFEEの本店があるのは、長府駅から車で7分ほどの場所。江戸時代には長府毛利藩五万石の城下町として栄えた「城下町長府」の一角に、武家屋敷をそのまま生かしたカフェを構えています。日本家屋ならではの落ち着いた雰囲気に包まれて頂くコーヒーの味は、また格別。どのような経緯で武家屋敷カフェが誕生したのか、思いを馳せずにはいられません。TAKADA COFFEEの歩みや未来へつなぐ願い、商品の魅力などについて、深掘りしました。

コーヒー農園での、ボリビアの生産者と東さん

始まりは街の小さな珈琲屋

東さんの母である、現代表取締役の東千鶴さんが創業した「TAKADA COFFEE」。当初は喫茶スペースと焙煎機を備えた、街の小さな珈琲屋であったという。当時は今と比べて豆の仕入れが難しく、自家焙煎の手法も広まっていなかったのだとか。それでも千鶴さんは「本当に美味しいコーヒーを届けたい」という一心で、常にお客様と向き合い、焙煎機を動かし続けた。

自ら配達などもおこない、実直な姿勢でTAKADA COFFEEを地域に根付かせていった千鶴さん。その背中を見て育った東さんもまた、お客様一人ひとりに心を寄せて、コーヒーの楽しさを広げようと注力するようになった。「コーヒーショップが40年近くも続くことはほとんどありません。創業時から一貫してお客様に目線を合わせ、よいものを届けようと試行錯誤を重ねたからこそ、今のTAKADA COFFEEがあると思います」と、現在エリア統括マネージャーを担う、藤原潤さんは頷く。

エリア統括マネージャーを担う、藤原さん

家業を継いだ二代目の取り組み

藤原さんは大学卒業後にフード系の専門学校で学び、名高いホテル運営会社に勤めていたという。そのときに先輩社員であった東さんと出会い、ともに現在のキャリアへつながる幅広い業務に従事した。やがて東さんが家業のコーヒーショップを継ぐことになると、志願してTAKADA COFFEEへ。入社の経緯を聞くにつけても、東さんに厚い信頼を寄せていることが伺える。

藤原さんによれば、専務取締役である東さんはコーヒーの買い付けや焙煎を一手に担うだけでなく、武家屋敷カフェ併設のスイーツ&ギフトショップ「SOU/ZAEMON」に並ぶ商品のパッケージデザインなども手がけているとのこと。加えて、コーヒーに合う自家製スイーツの開発についても、中心になって進めているというから驚く。母が築いてきたものを大切に守りつつ、主体的なアクションを起こし続ける東さん。その姿を見て、藤原さんも日々学びを得ている様子だ。

SOU/ZAEMON by TAKADA COFFEE 武家屋敷本店

人や文化をつなぐという役割

武家屋敷を継承し、地域に根差した取り組みを続ける一方で、遠く海外のコーヒー生産者たちに心を寄せている点もまた、TAKADA COFFEEの特徴といえるだろう。世界にはいくつものコーヒー生産国があり、大勢の人がコーヒーに携わっているものの、ほとんどが裕福とはいえない生活環境に身を置いており、危険と隣り合わせの状態でコーヒーを作り続けているという。東さんは良質な豆を求めて現地へ足を運ぶたびに、窮状を目の当たりにしてきた。だからこそ、生産者から届くコーヒーを誠実に焙煎するよう意識しているそうだ。

TAKADA COFFEEは美味しいコーヒー作って広く届けることが、人や文化をつなぐ役割を果たすとも考えている。一杯のコーヒーを堪能し、まるで旅するときのように、作り手の息遣いや生産地にまつわる物語を感じ取ってほしい。同時に、TAKADA COFFEEの思いや山口県の魅力を未来へつなげたい。そのような願いを込めて、「旅とコーヒー」と銘打ったドリップコーヒーバッグシリーズをかたちにした。

現在販売されている旅とコーヒーの「山口ブレンド」は、後味が明るくスッキリした印象の一杯となっており、フローラルでしっかりした果実味の甘さが特徴。山口県の風景をあしらったオリジナルデザインが採用されているため、お土産にも最適だ。同商品をはじめ、高品質なコーヒーを届けることがひいては生産者たちへのサポートになるという考えから仕上げられたスペシャルティコーヒーの数々は、「TAKADA COFFEE ONLINE STORE」を通じても買い求めることが可能。東さんが厳選した世界基準のコーヒーをぜひ味わってほしい。

山口県の名所をイラストで表現したパッケージの「旅とコーヒー」

一杯のコーヒーから広がる未来

TAKADA COFFEEでは、先代から受け継がれてきた「利他業の精神」が根強く息づいている。東さんは常に自分よりも他者を優先し、地域や人に寄り添う姿勢を大切にしてきた。武家屋敷カフェをオープンした背景にも、歴史ある地域の宝を未来へ受け継ぎたい、人々がふらりと立ち寄り笑顔を交わせる場所をつくりたいという思いがあったという。実際、TAKADA COFFEEの本店はオープン当初から賑わいを見せ、コーヒーショップという枠を超え、人が集うコミュニティの場としての役割も果たしている。

現在も、クラウドファンディングを活用して旅とコーヒーをテーマにした新商品の開発に取り組んだり、武家屋敷のさらなる活用を模索したりと、その歩みを止めることがないTAKADA COFFEE。生産者との信頼関係を大切にしながら、美味しいコーヒーを提供し続ける姿勢にも変わりはない。「大きく夢を持ち、小さく取り組む」ことを常に意識し、目の前のお客様に高品質な一杯を最良の状態で届けることを何よりも大切にしている。

奥深いがゆえに、時に難しいものとして捉えられがちなコーヒー。しかし、まずはありのままの感性で、その魅力に触れてほしい。一杯のコーヒーが人々の生活や未来にそっと余韻を残す――そんな体験を届けることこそが、TAKADA COFFEEのめざすところなのだろう。

SOU/ZAEMON by TAKADA COFFEE 武家屋敷本店

〒752-0978 山口県下関市長府侍町1-2-39 
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TEL/ 083-242-0950
営業時間/10:00~17:00
定休日/水曜日

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