一杯のコーヒーから
人と人をつなぎ
多くの人を笑顔に
一杯のコーヒーから
人と人をつなぎ
多くの人を笑顔に
山口市/山口
2026.09.30
山口市と下松市に店舗を構え、スペシャルティコーヒーの魅力を発信するSai Coffee Roastery。カフェ運営をはじめ、コーヒー豆の卸売や開業支援まで幅広く手がけています。
こうした事業を率いるのが、齊藤光信さんです。家業として続いてきたコーヒー店を受け継ぎ、従来のスタイルからスペシャルティコーヒーを軸とした店へと変化させてきました。根底にあるのは、コーヒーを通じてお客様はもちろん、卸先や生産者、地域の人々など、多くの人を笑顔にしたいという思いです。
齊藤さんに、これまでの歩みや現在の取り組み、今後の展望について伺いました。
「コーヒーを通じて、多くの人を笑顔にしたい」と語る齊藤光信さん
Sai Coffee Roasteryのルーツは、1967年に齊藤さんの父が創業したオリエンタルコーヒーにある。もともとはレストランとしてスタートし、その後、下松市の商業施設・下松タウンセンター内にカフェを出店。昔ながらの深煎りコーヒーを提供する傍ら、コーヒー豆の卸売も手がけていた。
齊藤さんがオリエンタルコーヒーを手伝い始めたのは、今から12年ほど前のことだ。それまでは福祉業界で営業職として働き、高齢者の住環境整備や福祉用具の提案などをおこなっていた。仕事は順調だったが、多忙な毎日のなかで、次第に自分の生き方を見つめ直すようになる。
そんなときに足を運んだのが、両親が営むオリエンタルコーヒーだった。店内には、コーヒーを飲みながら思い思いの時間を過ごす人たちの姿があった。会話を楽しむ人、ほっと一息つく人、笑顔を見せる人。その様子を目にした齊藤さんは「両親は人を幸せにする仕事をしているんだ。自分もこの仕事に携わりたい」と感じたという。その思いは次第に強くなり、数カ月後には会社を退社。本格的に家業へ入ることを決めた。
山口店に設置された焙煎機。豆の個性を引き出す焙煎を行う
しかし、当時の齊藤さんはコーヒーが特別好きなわけではなかった。転機となったのは、オリエンタルコーヒーを手伝い始めて間もないころに訪れた福岡のコーヒー店での体験だ。そこで飲んだ一杯のコーヒーは、それまで抱いていた「コーヒーは苦いもの」というイメージを覆すものだった。「こんなに華やかで甘く、フルーティーなコーヒーがあるのかと衝撃を受けました」と齊藤さんは振り返る。
その一杯はスペシャルティコーヒーと呼ばれるものだった。スペシャルティコーヒーとは、品質や味わいなど一定の基準を満たした高品質なコーヒーのこと。産地や品種、精製方法によって生まれる個性豊かな風味が明確に感じられるのも特徴だ。
この美味しさをもっと多くの人に伝えたい。そう考えた齊藤さんは、日本スペシャルティコーヒー協会の研修に参加し、コーヒーマイスターの資格を取得。知識や技術を学ぶうちに、コーヒーの奥深さにも魅了されていった。世界各地の農家が土地や気候に合わせた豆を育て、その個性を引き出すために工夫を重ねる。さらに、焙煎士やバリスタの技術によっても味わいは変化する。一杯のコーヒーの向こう側に、生産者や焙煎士、バリスタなど多くの人の仕事がある。その奥深さに面白さを感じ、次第にコーヒーの世界へのめり込んでいった。
こうした学びや経験を重ねるなかで、店づくりも変化していく。従来の一般的なコーヒーを提供するスタイルから、スペシャルティコーヒーを軸とした店づくりへと転換。Sai Coffee Roasteryとして、その魅力を発信するようになった。
店頭には、世界各地から厳選したスペシャルティコーヒーが並ぶ
現在、Sai Coffee Roasteryは山口市と下松市に店舗を構える。店内ではスペシャルティコーヒーの提供やコーヒー豆の販売をおこなっているほか、自社オンラインショップでも商品を展開。さらに、キッチンカーでイベントや観光地へ出店し、店舗以外でもスペシャルティコーヒーの魅力を届けている。
その一方で、カフェやホテルなどに向けた卸売事業も展開。豆やドリップパックを卸すだけでなく、抽出技術の指導など、スタッフ向けのトレーニングもおこなっている。新たにカフェを開業する事業者に向けては、店舗づくりのサポートも実施。動線に配慮した空間設計、エスプレッソマシンや厨房機器の選定、メニュー開発まで幅広く支援している。前職で高齢者の住環境整備に携わった経験が、ここでも生かされている。
現在、サポートする店舗は20店ほど。約3年前から本格的に取り組み始め、少しずつ支援の輪を広げてきた。「自分が店に立って淹れられるコーヒーは、1日30~40杯ほどです。でも、サポートしたお店がそれぞれ美味しいコーヒーを提供できれば、もっと多くの人を笑顔にできると思うんです」と齊藤さん。コーヒーを通じて多くの人を笑顔にしたい。その思いが、Sai Coffee Roasteryの事業を広げる原動力となっている。
産地や品種、精製方法によって、多彩な風味を楽しめるコーヒー豆
Sai Coffee Roasteryでは、一部の海外農園と直接取引をおこない、高品質なコーヒー豆を継続的に仕入れている。品質に見合った対価を支払うことで、生産者の生活や設備投資を支え、さらなる品質向上につなげる。そうした循環のなかで生まれたコーヒーを届けることも、大切にしている取り組みの一つだ。
齊藤さんが多くの人に伝えたいのが、コーヒー豆の向こう側にいる生産者の存在だ。「どこで、誰が、どのようにつくった豆なのか。そこまで知ったうえで味わってもらえたらうれしい」と話す。コーヒーは、農園で働く人々の手によって育てられ、日本へ届けられる。その過程を知ることで、一杯のコーヒーの味わいもまた違って感じられるという。
店舗やオンラインなどで販売している一部の豆には、生産地や農園の情報を記したカードを添えている。しかし、それだけでは生産者の人柄や、豆が育つ土地のことまで十分に伝えることは難しい。今後はメディアなどでの情報発信を通じて、一杯のコーヒーの背景にある物語も届けていきたい考えだ。
また、コーヒーを通じて山口県に貢献することも、齊藤さんが大切にしているテーマの一つだ。その一環として、長門湯本温泉街でエチオピアコーヒー専門店の開業準備を進めている。厳選したエチオピア産のスペシャルティコーヒー豆を取り扱い、イートインも楽しめる店舗となる予定だ。コーヒー好きの人が「この店に行ってみたい」と思い、山口県を訪れるきっかけになることをめざしている。
生産者、事業者、消費者、そして地域。コーヒーを通じて人と人をつなぎ、その先に笑顔を増やしていく。Sai Coffee Roasteryが届けようとしているのは、一杯の美味しさだけではない。コーヒーの先にある、人と人とのつながりだ。

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