かまぼこづくりを原点に
新しい美味しさも届ける
萩の食をもっと楽しく
かまぼこづくりを原点に
新しい美味しさも届ける
萩の食をもっと楽しく
萩市/山口
2026.10.28
山口県北部に位置する萩市は、日本海の豊かな漁場に恵まれ、古くから焼き抜きかまぼこづくりが盛んな地域です。エソなどの魚を原料につくられる焼き抜きかまぼこは、ぷりっとした弾力と豊かな風味が特徴。萩の特産品として受け継がれてきました。
この伝統を守り続けるのが、1961年に萩市で創業した株式会社村田蒲鉾店です。鮮魚から加工する昔ながらの焼き抜きかまぼこづくりを受け継ぎ、県内5つの直営店などで販売。一方で、近年は萩城下町にプリンやクラフトビール、わらび餅を提供する店舗も展開し、新たな客層や観光需要の開拓にも力を入れています。
伝統と挑戦を両立する同社の歩みや事業への思いについて、常務取締役の中原充彦さんにお話を伺いました。
かまぼこづくりへの思いや、これからの展望を語る、常務取締役の中原さん
村田蒲鉾店の創業は1961年。初代・村田四郎さんが萩市浜崎地区で、焼き抜きかまぼこの製造販売を始めた。その後、スーパーや道の駅への卸など販路を広げながら事業を拡大。2009年には萩城下町から車で5分ほどの場所に工場を移転し、2015年には工場に隣接する直営店「村田蒲鉾店本社 総本店」をオープンした。現在はこの総本店を含め、県内に5つの直営店を構えている。
店舗や販路は広がったが、かまぼこづくりへのこだわりは創業当初から変わらない。萩伝統の焼き抜きかまぼこをつくり続けること。そのために、主原料となるエソにこだわり、鮮魚から加工する製法を守っている。
冷凍のすり身を使用するメーカーが多いなか、同社では魚をさばき、身を丁寧に洗い、石臼で練り上げる昔ながらの工程を採用。そして蒸すのではなく、板の下から熱を加え、じっくり焼き上げている。
手間のかかる製法ではある。それでも、原料と製法の両面から焼き抜きかまぼこの伝統を受け継ぎ、その味を守り続けている。
生エソ100%でつくる、村田蒲鉾店こだわりの焼き抜きかまぼこ「村四郎」
村田蒲鉾店を代表する商品が、「村四郎(むらじろう)」だ。創業者である村田四郎さんがつくっていたかまぼこの味を再現するため、2007年に3代目社長が主導して商品化した。原料は生エソ100%。近年はエソの水揚げ量が減少し、大量生産はできないが、素材や製法にこだわる人々を中心に支持を集めている。
一方、長年親しまれているシリーズが「萩王」だ。漁獲後、船上で加工された鮮度の高いすり身に生エソをブレンドし、安定した品質と供給を実現。贈答品としても利用されている。
どちらの商品にも共通するのは、焼き抜きかまぼこならではの弾力としなやかな食感、そして魚の風味だ。「生で食べても美味しいと言っていただくことが多いです」と中原さん。煮物などの料理に使うだけでなく、そのまま味わうことでぷりっとした食感や魚の旨みをより感じられるという。
また、かまぼこのほかにも、ちくわや魚のすり身を揚げた天ぷら、個性豊かな10種の創作天ぷらを一口サイズで楽しめる「むらてんbits」なども展開。若い世代にも親しみやすい商品づくりにも取り組んでいる。
これらの商品は直営店や自社オンラインショップを中心に販売され、スーパーへの卸など複数の販路を持つことも同社の強みだ。
鮮度の高いすり身に生エソをブレンドした、長年親しまれる「萩王」
村田蒲鉾店の特徴の一つが、観光需要に目を向けた事業展開だ。萩市には、江戸時代の町割りや武家屋敷が今も残る萩城下町がある。この城下町に2021年、プリンの専門店「萩ぷりん亭」をオープンした。
きっかけは、以前から所有していた城下町の物件だった。この物件を生かしたいという思いはあったものの、かまぼこだけでは観光客が気軽に立ち寄れる店づくりは難しいと考えていた。そこで着目したのがプリンだった。「観光地には食べ歩きの文化がありますが、萩城下町にはそれに対応する商品がほとんどありませんでした。気軽に楽しめるスイーツがあればと思ったんです」と中原さんは話す。
各地のプリン店を巡り、菓子づくりの経験がある社員とともにレシピを開発。長年のかまぼこづくりで培ってきた食づくりのノウハウがあったため、新たな挑戦へのハードルはそれほど高くなかったという。
完成したプリンは、卵やミルクの風味を生かしたなめらかな味わいが特徴。プレーンのほか、萩産の夏みかんを使ったマーマレードや、菊ヶ浜の海をイメージしたコバルトブルーのラムネ風味ジュレを合わせた商品などもそろう。プリンとトッピングが2層になった色鮮やかな見た目も魅力の一つだ。
オープン後は多くのメディアで取り上げられ、想定を上回る反響を得た。製造が追いつかず、オーブンを増設したほどだったという。
萩城下町に並ぶ「萩ぷりん亭」と萩城下町BEER「MURATA」
さらに、同年には萩ぷりん亭の隣に、オリジナルクラフトビールと揚げたての「むらてんbits」を楽しめる、萩城下町BEER「MURATA」もオープンした。背景には、クラフトビールを入口に、これまで接点の少なかった人たちにも練り物の美味しさを知ってもらいたいという狙いがある。串に刺さった揚げたてのむらてんbitsは、食べ歩きにもぴったりだ。
加えて2022年には、同じく萩城下町に、希少な本わらび粉と萩を流れる清流・阿武川の天然水でつくるわらび餅の専門店「萩ノ早蕨(はぎのさわらび)」も立ち上げた。わらび餅を使ったドリンクやパフェなども提供しており、店内のイートインスペースやテラス席で休憩しながら味わうこともできる。
こうした店舗展開は、思わぬ効果ももたらした。プリンやわらび餅を食べた若い世代が、かまぼこを求めて総本店に訪れるようになったのだ。比較的高い年代が中心だったかまぼこの客層にも変化が生まれ、村田蒲鉾店の認知度向上にも一役買っているという。
萩城下町に店を構える、本格わらび餅専門店「萩ノ早蕨」
多彩な店舗を展開してきた村田蒲鉾店。今後は新規出店を急ぐよりも、今ある店舗をさらに充実させていきたいという。特に力を入れたいと考えているのが、2025年に山口市内にオープンした「山口本店」「山口中市店」の2店舗だ。山口市内には、練り物を日常的に食べる文化が萩ほど根付いていない。まずは村田蒲鉾店を知ってもらい、練り物の美味しさに触れてもらうことが課題だ。
また、スーパーなどへの卸についても販路を広げていきたい考えだ。現在は山口県内を中心に展開しているが、今後は近畿エリアへの拡大にも取り組んでいきたいという。
新しい事業に挑戦しても、その中心にあるのは萩の伝統を伝えるかまぼこづくりだ。鮮魚を使い、石臼で練り、焼き抜きで仕上げる。創業以来受け継いできた製法を守りながら、新しい発想でその魅力をより多くの人へ届けていく。村田蒲鉾店の挑戦は、これからも続いていく。

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