広島市/広島

受け継いだ味に
新たな物語を添え
食卓へ届ける

広島市/広島

川中 康三_川中醤油

2026.08.19

川中醤油株式会社が本社を構える広島市安佐南区伴地区は、中国山地が育む豊かな水に恵まれた土地です。1906年にこの地で創業した同社は、その良質な水を生かしながら、醤油づくりを続けてきました。現在は醤油だけでなく、だし醤油やめんつゆ、ぽん酢、ドレッシングなど多彩な商品を展開しています。お客様のニーズに応えながら、物語のある商品を丁寧につくる。そんな思いのもと、数々の味を生み出してきました。

4代目代表取締役社長の川中康三さんに、創業から約120年にわたる歩みや商品づくりへの思い、今後の展望について伺いました。

120年続く醤油づくりへの思いを語る、4代目・川中康三さん

醤油から生まれた新たな味

川中醤油は1906年、川中さんの曽祖父・力三さんによって創業された。当初は地域の人々へ醤油を届ける小さな醸造所として歩みを始める。やがて、祖父・俊三さんが2代目に就任すると、業務用販売にも力を入れ、徐々に販路を拡大していった。

大きな転機となったのは1973年だった。醤油づくりには多くの設備や工程が必要になることから、広島県内約100社の醤油メーカーが共同で広島県醤油醸造協同組合(現・中国醤油醸造協同組合)を設立。2代目・俊三さんは初代代表理事に就任し、生揚げ(きあげ)醤油(熱処理や濾過をしない醤油)の共同製造体制づくりを牽引した。この仕組みにより醤油の製造にかかる負担が軽減され、各社はそれぞれの強みを生かした商品開発に力を注げるようになった。川中醤油もまた、醤油の可能性を広げる新たな挑戦を始める。

その代表が、3代目である父・敬三が1985年に発売した「芳醇天然かけ醤油」だ。本醸造濃口醤油に、自社で抽出したかつおの一番だしと昆布の旨みを合わせた商品で、このヒットをきっかけに、めんつゆやぽん酢などの開発も本格化していった。

現在は自社ブランド商品約50種に加え、200種にも及ぶプライベートブランド商品も手がけ、川中醤油は少量多品種を手がけるメーカーへと成長を遂げている。

40年以上愛され続ける、川中醤油を代表するだし醤油

手間を惜しまないだしづくり

川中醤油を代表する商品が、芳醇天然かけ醤油だ。1985年に発売されたこの商品は、中国地方で初めて商品化されただし醤油といわれている。現在ではスーパーなどで当たり前に目にするだし醤油だが、当時はまだ一般的ではなく、家庭でだしと醤油を合わせて使う人も少なくなかった。大豆由来の植物性食品である醤油に、動物性のかつおだしを加えることをタブー視する醤油メーカーも多かったという。しかし、3代目となる父・敬三さんは「お客様が求めるものをつくるべき」という考えのもと、商品化を進めていった。

その大きな特徴は、手間を惜しまない丁寧なだしづくりにある。本醸造濃口醤油に、自社でかつお節から抽出した一番だしと昆布の旨みを合わせる製法を採用し、製造の際には今でも工場でだしをとる工程を続けている。だしエキスを使うメーカーも多いなか、川中醤油では芳醇天然かけ醤油だけでなく、めんつゆや根こんぶ醤油などでも原料からだしをとることにこだわる。「大変な作業ですが、美味しさのためです。ここまで手をかけている醤油メーカーは珍しいと思います」と川中さんは胸を張る。

こうして生まれる芳醇天然かけ醤油は、かつおと昆布の豊かな旨みが広がるまろやかな味わいだ。塩味がやわらかく、幅広い料理に合わせやすい。そのまま卵かけごはんや冷奴にかけるのはもちろん、煮物や炒め物などの味付けとしても活躍する。長年にわたり多くの人に親しまれてきた背景には、変わらぬ製法へのこだわりがある。

醤油をはじめ、だし醤油やぽん酢など多彩な商品が並ぶ

物語のある商品づくり

だし醤油のヒット以降も、川中醤油は新たな商品の開発に力を注いできた。その取り組みは現在も続いており、「新たな味わいで、食卓をより楽しく豊かなものにしたい」という思いのもと、毎年欠かさず新商品を開発しているという。

2026年9月には、「しょうが醤油」とパッケージと容器を刷新した「おでんだし」を発売した。しょうが醤油は、芳醇天然かけ醤油に国産生姜を加えた商品だ。だしの旨みに加え、生姜ならではの辛味と風味をしっかりと感じられるのが特徴。冷奴やかつおのたたき、焼きなすなどにそのままかけるだけで使える手軽さも魅力となっている。

一方、おでんだしは、薄口生揚げ醤油に広島産の牡蠣エキス、かつおと昆布のだしを加えたおでん用の濃縮だし。従来のシックなラベルを親しみやすいデザインへと刷新し、より手に取りやすい商品へと生まれ変わった。

こうした商品開発の背景にあるのが、「物語のある商品づくり」という考え方だ。「何のためにつくるのか。なぜ自分たちがつくるのか。そこを大切にしたいんです」と川中さんは語る。

たとえば、醤油に黒糖とりんご果汁を加えたみたらし味の「みたらしろっぷ」は、スイーツにも醤油の美味しさを取り入れてほしいという思いから誕生した商品だ。また、「瀬戸内産亀ちゃん農園の完熟トマトドレッシング」は、大崎上島のトマト農家から、余ったトマトを活用できないかと相談を受けたことがきっかけで開発された。さらに、安芸高田市高宮町川根産の川根柚子の果汁をふんだんに使った「採れたて生搾り柚子ぽん酢しょうゆ」には、川根柚子の魅力をより多くの人に知ってほしいという願いが込められている。

単に美味しい商品をつくるだけでなく、その背景にある思いを形にする。それが川中醤油らしい商品づくりなのだ。

新たな味わいを提案する、しょうが醤油とおでんだし/スイーツにも醤油を。そんな思いから生まれた「みたらしろっぷ」

つながりから生まれる挑戦

川中醤油の商品は、自社オンラインショップのほか、工場に併設する直営店舗「醤(ひしお)の館」でも販売されている。

醤の館は、「お客様と直接つながれる場をつくりたい」という思いから立ち上げられた。スーパーなどを通じた販売ではなかなか得られないお客様の声に直接触れられる場として、大切な役割を担っている。店内には醤油やだし醤油、ぽん酢など多彩な商品が並ぶほか、名物の「しょうゆソフトクリーム」も販売。近隣はもちろん、県外から足を運ぶ人もおり、リピーターも多い。

お客様とのつながりを大切にする一方で、地域の味を支える醤油屋として地域の企業や学校などとの連携も大切にしている。その一例が、広島市立広島商業高校との共同開発商品「とろ~り梅しょうゆ」だ。芳醇天然かけ醤油にカリカリの梅とはちみつを加えただし醤油で、企画からラベルデザイン、販売まで高校生が携わっている。

「地域の方々と協力しながら、これからも新しい商品をつくっていきたいです」と川中さんは話す。自社だけで完結するのではなく、多様な人たちと協力しながら新たな価値を生み出していくことも、川中醤油がめざす商品づくりの一つだ。そのひとつとして、現在、JR西日本グループと共同で、新たな広島みやげとなる商品の開発に取り組んでいる。

創業から120年余り。豊かな水から始まり、だし醤油、そして物語のある商品づくりへ――。川中醤油はこれからも、人や地域とのつながりを大切にしながら、新たな味を生み出し続けていく。

醤の館で味わえる、醤油の風味がやさしく香る名物ソフトクリーム

醤の館

〒731-3165 広島市安佐南区伴中央4-1-6 地図を見る

TEL/082-848-2632
営業時間/10:00~18:00
※店休日前日のソフトクリーム販売は17時まで
店休日/水曜日
※ただし、水曜日が祝・祭日の場合は翌日の平日が店休日

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