尾道市/広島

そのひと手間で
真心を届ける
尾道のかりんとう

尾道市/広島

宮本 和武_製菓宮本

2026.09.16

広島県尾道市に本社を構える有限会社製菓宮本。1960年の創業以来60年以上にわたり、かりんとう一筋で歩んできました。

同社のかりんとうは、一般的な黒かりんとうとはひと味違います。卵を使ったコクのある生地や、一つひとつ手作業で生み出される個性的な形が特徴です。その背景には、効率よりも「ひと手間」を大切にするものづくりがあります。

代表取締役の宮本和武さん、専務取締役の宮本宏恵さんに、製菓宮本ならではのかりんとうの魅力や、つくり手としての思い、これからの展望について伺いました。

代表の和武さん(右)と専務の宏恵さん(左)

生地へのこだわり

製菓宮本の始まりは1960年。自ら事業を起こしたいと考えていた和武さんの父が、廃業を予定していた尾道市内のかりんとう製造会社から機械と製法を受け継いで創業した。以来60年以上にわたり、かりんとうづくりを続けている。

製菓宮本のかりんとうは、生地づくりから一般的なものとは異なる。一般的な黒かりんとうは、小麦粉と水を練った生地をイーストで膨らませ、揚げた後に黒蜜をまとわせる。一方、製菓宮本では卵や塩を加えた生地を膨張剤で膨らませ、商品によってはグラニュー糖の蜜を使ったり、糖蜜自体を使わなかったりする。

「私たちのかりんとうは、生地そのものを味わっていただけるんです」と和武さん。卵や塩によって生まれるコクと旨み、膨張剤による軽やかな食感。「これ、本当にかりんとう?」「焼き菓子かと思った」。そんな声が寄せられることも少なくないという。

製菓宮本を代表する人気商品「りぼんかりんとう」

ひと手間が生む多彩な形

もう一つの特徴が、手作業による成形だ。かりんとうというとスティック状をイメージするが、製菓宮本では縄のようにねじった「大ねじ」、中央をつまんだ「りぼん」、渦巻き状の「うず」など多彩な形の商品を展開している。こうした形は愛らしい見た目だけでなく、食感や味わいにも違いを生み出す。ねじれやへこみ部分に糖蜜がしっかりと絡むことで、噛み進めるごとに甘さや風味、食感が変化する。単調にならず、最後まで飽きずに食べ進められるのも魅力だ。

「ひと手間加えること」が同社のコンセプト。効率だけを考えれば機械化という選択肢もあるが、あえて手作業での成形を続けてきた。そこには、つくり手の真心が込められている。「家庭料理もひと手間加えることで、つくった人の気持ちがより伝わりますよね。それと同じです」と宏恵さん。

ねじり方やつまみ方には、つくり手それぞれの手の動きや個性が表れる。同じ商品でも一つひとつ形が少しずつ異なるのは、手仕事ならではの魅力だ。手仕事ならではの温かみもまた、製菓宮本のかりんとうを形づくる大切な要素となっている。

一つひとつ人の手でつまみ、りぼんの形へと仕上げていく

原点の大ねじ、看板のりぼん

製菓宮本では定番商品を中心に約10種類の商品を展開している。そのなかでも創業当初からつくり続けているのが「尾道かりんとう 大ねじ」だ。棒状の生地を1本ずつ縄のようにねじり、グラニュー糖の蜜で包んだ商品で、同社のなかでは甘みの強い王道のかりんとうとして親しまれている。

一方、現在の看板商品となっているのが「りぼんかりんとう」だ。誕生したのは今から40年ほど前。大ねじなどに続く新たな形を模索するなかで、和武さんの母が口にした「つまんだらどう?」という一言をきっかけに開発された。

可愛らしいりぼんの形に加え、表面を糖蜜で包んでいないのも大きな特徴。卵を使った生地そのものの美味しさを楽しめる、クッキーに近い味わいだ。発売当初は、「かりんとうといえば糖蜜がかかっているもの」というイメージが強く、すぐには受け入れられなかった。しかし県外を中心に徐々に評価を集め、その後地元でも親しまれるように。発売から10年ほどで人気商品へと成長し、現在では製菓宮本を代表する商品となっている。

大ねじ、うず、りぼん、平ねじ。手仕事から生まれる多彩なかりんとう

新たな味わいを求めて

これまで培ってきた製法を大切にしながら、新たな味わいにも挑戦を続ける。地域の素材を生かした商品や、健康を意識した商品づくりにも力を注いでいる。

その一つが「瀬戸内レモンかりんとう」。広島県産レモン果汁と瀬戸内産レモンピールを糖蜜に使用し、爽やかな風味に仕上げている。また、「みそかりんとう」は、広島市に本社を置く老舗味噌メーカー・新庄みその生味噌を糖蜜に加え、味噌の豊かな香りと生地の風味が調和した一品だ。

さらに、生地にキヌア・黒ごま・大麦・大豆・玄米を練り込んだ「五穀かりんとう」も展開。りぼんかりんとうをベースに開発した商品で、健康を意識する人たちを中心に支持を集めている。

しかし、新しい素材を取り入れれば、それだけで商品になるわけではない。かりんとうは油で揚げてつくるため、素材によっては香りや色が思うように残らないこともある。例えば、抹茶を使った商品も検討したが、熱によって鮮やかな緑色が茶色く変色してしまい、商品化には至らなかったという。

「納得できる仕上がりでなければ商品化したくない」と宮本夫妻は口をそろえる。地域の素材を使うことが目的ではない。素材の持ち味をどう生かし、製菓宮本らしいかりんとうとして届けるか。試行錯誤を重ねながら、かりんとうの新たな可能性を探り続けている。

地域の素材を生かした商品や、新たな味わいにも挑戦している

こだわりを届けるために

製菓宮本のかりんとうは、広島県内のスーパーを中心に全国でも販売中だ。また、近年では自社オンラインショップでの販売にも力を入れている。息子の欣己(よしき)さんが中心となってオンライン展開を進めるとともに、SNSを活用した情報発信にも取り組んでおり、新たな顧客との接点も広がりつつある。

今後は、さらなる販路開拓も視野に入れている。卵を使った独自の生地や、手作業で生み出される個性的な形は、一般的なかりんとうとはひと味違った魅力を持つ。だからこそ、これまで主力としてきた量販店に加え、土産物店やこだわりを持った売り場など、商品の魅力や背景をより丁寧に伝えられる場にも広げていきたいと考えている。

また、新たな取り組みの一つが、JR西日本グループが広島・山口の事業者と展開するプライベートブランド「SUTEKI COLLECTION」への参画だ。2026年に「宮本のシニャモンレモンかりんとう」を発売した。レモンの爽やかさとシナモンの華やかさを掛け合わせた商品で、JR広島駅直通の商業施設「ekie(エキエ)」などでも展開される予定。多くの人が行き交う駅での販売を通じて、製菓宮本のかりんとうの魅力やそこに込めた思いを、より多くの人に知ってもらいたい。そんな願いも、この取り組みには込められている。

効率だけを求めれば、もっと違うつくり方もある。それでも製菓宮本は、ひと手間を惜しまない。そのひと手間には、つくり手の真心が込められている。今日も尾道で、その思いをのせたかりんとうが、一つひとつ丁寧につくられている。

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