岩国市/山口

食材のプロが挑む
岩国れんこんの
新たな美味しさ

下関市/山口

清水 喜江_池本食品

2026.09.02

山口県岩国市には、地域の食文化を支えてきた特産品「岩国れんこん」があります。一般的なれんこんより1つ多い9つの穴をもち、シャキシャキとした歯触りともちもちとした粘りのある食感が特徴です。根菜をたっぷりの出汁で煮込んだ「大平(おおひら)」や、華やかな押し寿司「岩国寿司」など、岩国の郷土料理にも使われてきました。

岩国に本社を置き、業務用食品の卸売を担ってきた有限会社池本食品は、この岩国れんこんに新たな可能性を見出し、自社商品開発という挑戦に踏み出しました。代表取締役の清水喜江さんに、池本食品のこれまでの歩みと現在の取り組み、そしてこれから描く展望について伺いました。

岩国れんこんを生かした商品づくりに取り組む、代表の清水さん

卸売から自社商品開発へ

池本食品は、1967年に清水さんの父によって設立された。以来、岩国市を中心に飲食店や病院、老人ホームなどへ食品を卸す業務用卸売業として歩みを重ねていく。加工食品や割烹食材、海鮮珍味といった幅広い食品を扱い、「食に関わるものならなんでも届ける」という姿勢で、地域を支え続けてきた。

清水さんは今から25年ほど前に家業を手伝うようになり、父の他界を経て約10年前から2代目代表取締役を務めている。家業に携わるようになったころ、業務用卸の売上は減少傾向にあり、しばらく経っても大きく回復することはなかった。価格主導権を持ちにくい業態のなかで、「自分たちで値段を決められる商品が必要だ」と考えるようになる。そうした思いから、業務用卸と並行して自社商品の開発に踏み出した。

業務用卸と商品開発を担う池本食品

岩国れんこんで築いた新たな柱

地域資源を生かした独自の商品を考えるなかで注目したのが、岩国れんこんだった。長年の業務用卸を通じて築いてきたつながりから、れんこん粉をつくる企業や製麺業者と結びつき、「岩国れんこんを使った麺をつくってみないか」という発想が生まれる。

こうして誕生したのが「岩国蓮根麺」だ。岩国蓮根の粉末を国産小麦粉に練り込み、広島産の牡蠣殻由来の成分を加えてコシを出した生地を、「鳥志掛け」と呼ばれる製法で熟成・乾燥させる。出来上がった麺は、れんこんの鉄分によって灰色がかり、皮の名残で黒い点が見える。見た目は日本そばに似ているが、そば粉は使っていないため、アレルギーが気になる人も安心して楽しめる。口当たりはつるりとしていながら、もちもちとした弾力があり、伸びにくく、和洋中さまざまなスープに合わせやすい。

完成後はセミナーやイベント、マルシェなどへ積極的に出向き、商品の認知拡大に努めた。やがて、少しずつ人の目に留まり、手に取られるようになっていく。岩国には土産品が多くないという背景もあり、「岩国らしさ」を感じられる商品として支持を集めたという。「リピートしてくれる方が多い」と清水さんが話す通り、味そのものも評価され、取扱店は徐々に増加。メディアでの紹介をきっかけに認知はさらに広がり、今では年間で約4万5千食が流通する、池本食品を代表する商品へと成長した。

業務用卸と並行して自社商品を持つという構想は、この一品によって大きく前進した。

シャキシャキ感と粘りが特徴の「岩国れんこん」

連携で生み出す多彩な商品

岩国蓮根麺の認知が広がるにつれ、さまざまな事業者から声がかかるようになり、連携の機会も増えていった。そうしたなかで生まれたのが「岩国蓮根肉みそ」シリーズだ。コチュジャン、柚子、生姜、青唐辛子の4種展開で、コチュジャンはれんこんの肉みそを取り扱う企業からの声がけをきっかけに誕生した。2017年には「スーパーマーケットで買いたい!フード30選」にも選ばれ、岩国蓮根麺に次ぐ人気商品となる。あわせて、味噌メーカーをはじめとする地域事業者との連携により、柚子、生姜、青唐辛子が加わり、ラインナップは広がりを見せていった。

さらに2022年には、JR西日本中国統括本部広島支社が広島・山口の地域事業者と実施する、商品開発および販路開拓プロジェクト「てみてプロジェクト」に参加。下関の料亭「上方割烹 アっ晴゜」監修のもとで開発されたのが、「蓮子さんの岩国蓮根和風カレー」だ。

岩国れんこんを主役に、九州産干し椎茸や北海道道南産昆布、山口県産長州どりなど国産の食材を組み合わせたレトルトカレーで、輪切りと粗みじん切りの岩国れんこんによる食感の違いが特徴となっている。どこか懐かしさを感じさせる、やさしい和風の味わいも魅力だ。また、パッケージには清水さんをモチーフにしたキャラクター「蓮子さん」が漫画タッチで描かれており、日本らしさを感じられるデザインとして、海外からの来訪者の目を引いている。

てみてプロジェクトを通じて得られた成果は、商品の誕生だけではなかった。販売データをもとにした分析や購入者層の把握といった視点を得たことで、その後の商品開発にも変化が生まれているという。実際に、そうした視点を生かし、岩国れんこんを使ったのど飴など、新たな商品も展開されている。

岩国れんこんを軸に、さまざまな事業者との連携のなかで商品を展開していく。その挑戦は、いまも続いている。

もちもち食感が魅力の「岩国蓮根麺」

地域に向き合い、つながりを大切に

現在、池本食品の自社商品は岩国市内を中心に、スーパーや土産物店などで販売されているほか、自社オンラインショップやJR西日本の公式オンラインショップ「DISCOVER WEST mall」でも展開中だ。また、山陽自動車道下松サービスエリアの上りでは、お土産としての販売に加え、岩国蓮根麺をその場で味わえる食事メニューとしても提供している。

今後も商品開発の軸に据えるのは、岩国れんこんだ。その特徴を生かした商品開発を、さまざまな事業者との連携のなかで続けていきたいという。一方で、会社としての持続性にも目を向けている。「従業員が安心して長く働ける会社でありたい」と清水さんは語る。従業員の人柄や仕事への向き合い方が、取引先との信頼関係を築き、新たな連携へとつながってきたからだ。働きやすい環境を整えることが、これからの事業の広がりを支える基盤になると考えている。

地域の特産と向き合い、人との関係を大切にしながら、池本食品はこれからも、岩国の地から新たな商品を生み出していく。

地域連携から生まれた「蓮子さんの岩国蓮根和風カレー」

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