光浦醸造の自家製酵母ベーカリー
「ebb&flow」が手掛ける
オリジナリティに溢れたパン
光浦醸造の自家製酵母ベーカリー
「ebb&flow」が手掛ける
オリジナリティに溢れたパン
防府市/山口
2024.07.17
山口県防府市の大道駅から徒歩3分ほどの場所にある、1865(慶応元)年創業の老舗「光浦醸造」。味噌や醤油といった伝統的な調味料を作り続けながら、乾燥レモン付き紅茶「フロートレモンティー」といった新機軸の商品を数多く提案しています。
そんな光浦醸造がパン屋をオープンしたのは2022(令和4)年のこと。本店に隣接する自家製酵母ベーカリー「ebb&flow」にて、麹づくりから手掛ける「酒種酵母」をメインにしたこだわりのパンを販売するようになりました。歴史ある醸造所がパン作りを始めるとは驚きですが、どのような経緯があったのでしょうか。ebb&flowにまつわる物語と人気商品の魅力を深掘りしました。
大道駅近くの県道187号線沿いにあるebb&flow
コロナ禍の影響によってさまざまな事象が停滞し、インバウンド需要も落ち込んだ時期。光浦醸造工業 株式会社の代表取締役であり8代目として醸造所を切り盛りする光浦健太郎さんは「自分たちで商品を販売して地元の人に足を運んでもらえることを始めよう」と思い至った。そこで着手したのがオリジナリティのあるパン作りだったという。味噌もパンも同じ発酵食品という視点から、自家製酵母によるパン作りを開始。イースト(パン酵母)ではなく酒種酵母を使用して、原始的かつ日本らしいパンを作り上げた。
このような手法に既存のレシピが存在したわけではない。シンプルな作り方を緻密な技術により追求していった。パン作りそのものを再構築するような感覚。こだわり抜いて完成させたパンは滋味深い味わいで、酵母の調子から生じる味の揺らぎも魅力の一つとなっている。
店長を務める德本るみ子さん
ebb&flowの店内に入ると種類豊富なパンと共に、店長を務める德本るみ子さんが出迎えてくれた。光浦さんがパン屋をオープンしようと決意した後に知り合ったという德本さん。以前は店舗を持たずに委託販売などを行っていたが、その頃の知人を介して縁が繋がり、ebb&flowの立ち上げから関わることとなった。
ebb&flowのパンは基本的に卵やバター、牛乳などを使用していない。アレルギー対策としても有効だが、ここにもシンプルな手法でものづくりを再構築したいとの思いが反映されているという。日々パン作りと向き合いながら各商品のブラッシュアップも怠らない。德本さんは「まだまだチャレンジを続けていきたいんです」と語る。
代表的なパンを伺うと3種をピックアップしてくれた。まずは光浦醸造特製の麹から作った酒種仕込みの「酒種食パン」。オープン当初からラインナップされており、試行錯誤のすえに現在の形で安定したという。続いてはやはり麹を入れた「酒種バゲット」だ。食パンの米麹とは異なる麦麹を使用しており、麦のプチプチとした食感が楽しめる。こちらの麦麴は光浦醸造の味噌にも使われているのだとか。ブラッシュアップの過程で麦麹を入れるようになった。最後に紹介されたのは5種類の味がある「メロンパン」。卵や乳製品を使用せず、シンプルな材料で仕上げた。メロンパンをはじめebb&flowのパンは一見小ぶりだが、中身が詰まっていて食べ応えがある。こだわりの味を存分に堪能したい。
酒種食パン、酒種バゲット、メロンパンとナツミカネード
週末には県外から訪れる人も多いというebb&flow。イートインスペースを備えており、発酵ドリンクや自家製ジンジャーエールなども楽しめる。また、光浦醸造の商品や食品雑貨なども販売されている。店舗を訪れた際には併せてチェックしたい。
なお、ebb&flowは各種イベントにも参加している。イベントを通じて長州藩が携帯食にしていたという山口最古のパン・備急餅を再現した「備急ブレッド」を配布するなど、独自の取り組みも続けているという。オリジナリティのあるものを試行錯誤しながら作り上げる挑戦の日々。ともすれば苦労が多いのではないかと思えるが「ebb&flow=潮の満ち引き」という店名のとおり、うまくいかないとき(引き潮・ebb)も良いとき(満ち潮・flow)も楽しみながら、自分たちのスタイルを貫いていきたいそうだ。
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