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周防大島町/山口

究極のジャム作りを目指す
地域に根差した島の果実工房
「瀬戸内ジャムズガーデン」の挑戦

周防大島町/山口

松嶋 匡史_瀬戸内ジャムズガーデン

2024.03.27

山口県柳井市にある大畠駅から車で25分ほど。瀬戸内海に浮かぶ周防大島の一画に地産の果物にこだわった手作りジャム屋「瀬戸内ジャムズガーデン」があります。店内には見た目も美しい色とりどりのジャムがずらり。併設のカフェで季節のジャムを使ったスイーツやドリンクを楽しむこともできます。

園主を務める松嶋匡史さんは京都出身。驚くべきことにジャム作りの構想を立てた時点では食に関するノウハウを持ち合わせていませんでした。そんな松嶋さんが周防大島にジャム屋をオープンするまでの経緯とは。松嶋さんが注力する地域に根差したプロジェクトと描く未来図についてもお話を伺いました。

終始穏やかにお話しいただいた松嶋さん

日本にない文化を根付かせたい

松嶋さんがジャムに魅せられたきっかけは2001(平成13)年の新婚旅行先での出来事だった。何気なく立ち寄ったパリの専門店で想像を超える数のジャムを見て衝撃を受けたのである。その当時日本では果物ごとに一つの味がある程度でジャムの種類がそれほど豊富なわけではない。一方、ヨーロッパでは食材を組み合わせることによって多彩なジャムが作られていた。

これは面白い。そう感じた松嶋さんは妻・ちあきさんに「ジャム屋をするか」と持ち掛ける。当時の松嶋さんは電力会社勤務。突拍子もない提案は受け流された。対して松嶋さんは事業計画書を作成。その内容が意外にも周防大島に住む義父と地域の人たちの目に留まる。果樹園を営む人が多かったこともあって程なくジャム作りがスタート。

ちあきさんも数か月おきに当時住んでいた名古屋から周防大島へ帰郷して作業に従事した。作業場はちあきさんの実家に当たり400年以上の歴史を持つ「浄土真宗本願寺派 荘厳寺」。義父である住職とも話し合い、材料にはお寺にあがる果物なども活用したという。その後、段階的に製造・販売の規模を拡大。手ごたえを確かめるようにしながら現在の瀬戸内ジャムズガーデンを形作っていった。

お店からは瀬戸内海の多島美も味わえる

理想のジャムを追い求めて

創業時から現在に至るまでジャムの製法自体はあまり変わっていない。不要な添加物は入れることなく果物と洗双糖(化学的脱色をする前のミネラル豊富な砂糖)でしっかりと煮詰め仕上げていく。煮込み時間やかき混ぜ方などは果物の個性を見極めて調整する。当初は他店にも教えを乞うた上で試行錯誤を繰り返したが「自分たちが一番良かった味」を再現できるのがこの製法だったという。ノウハウがなく業界の定石を知らないだけにひたすら理想を追い求めていった。

また、瀬戸内ジャムズガーデンが手掛けるジャムの味は地元の文化とも密接に関わっている。地中海性気候の周防大島は多種多様な果物の栽培が盛んな土地だ。地元農家との関係性の中でジャム作りに最適な果物を仕入れる。とはいえ市場には向かないB級品など余り物から選んでいるわけではない。あくまでもジャム作り向きの果物を買い取る。加えて耕作放棄地を再開墾した自社農園栽培の果物も使用している。

ジャムに息づく共存共栄の視点

最適な素材を相応の価格で仕入れる。このやり方にも松嶋さんの思いが強く反映されている。かつては地元農家の方が厚意で果物を置いていったり安く提供してくれたりというケースがあった。非常に有難かったが受け取るうちに「これは地域にとって良いことなのか?」との疑問が頭をもたげる。長期的にみれば地域のためにならないと行動を改めた。

農家が先細り廃業してしまえば求める果物が手に入らなくなる。「いろいろな形で地元農家さんが関わってくれていることがまた一つ、うちの会社の魅力につながっている」と考える松嶋さんにとって共存共栄の視点は欠かせない。都会のビジネスとは考え方が違う。そのようなお話を伺いながら瀬戸内ジャムズガーデンがこの地にあることの意味深さを改めて思った。

ジャムづくりに欠かせない果物が豊富な周防大島

豊かな自然を背景に島の味を頂く

地元農家の協力もあり現在は常時30種以上、年間約180種類もの季節のジャムやマーマレードを取り扱う瀬戸内ジャムズガーデン。年ごとに果物の味や収穫量が違うため松嶋ご夫妻らいろいろな人たちのチェックが入り、その年ならではの「究極のジャム」が仕上がっていく。ジャム工房の様子は見学窓から覗き見ることが可能だ。

どのジャムも自慢の味だが松嶋さんが好きなのは柑橘類・マーマレード系。中でも「清見タンゴール」のジャムが特にお気に入りなのだとか。美味しい原料がなければ美味しいジャムは作れない。柑橘類のジャムを口にすると「島の味」を実感できるという。最初に売り出したいちじく系のジャムにも思い入れがある。また、店が軌道に乗り始めた頃からの人気商品「金時いものドルチェ焼きジャム」もおすすめだ。食パンにジャムを塗ってからトースターでジャムごと焼くと一味違う食感が楽しめる。

併設のカフェにはパフェやケーキなどの旬のジャムと果物からできたオリジナルスイーツがラインナップされている。外には海を臨むガーデンテラスもある。大島大橋を経て周防大島に入り大自然に囲まれながら頂くスイーツはまた格別だろう。遠方にお住まいの方には公式の「オンラインブティック」もご活用いただきたい。

数多くの商品が並び、見ているだけでも楽しめる店内

地域の資源で人と人との関わりを作る

松嶋さんが周防大島に移住してきたのは35歳のとき。その当時世間的に見れば、働き盛りの世代が会社を辞めて地方へ移住するというと、ネガティブなイメージが強かった。しかし、島の人たちは初めから温かく迎え入れてくれた。その点は本当に有難かったと今改めて感じているそうだ。現在、松嶋さんのもとにはさまざまな人が視察に訪れる。その取組は「地方創生の先駆け」としても注目を集めている。

コロナ禍を経て物を作ることだけでなく「人と人との関係性」を築くことにも目を向けるようになったという松嶋さん。島に関わるきっかけを作りたいと「地域とともにレモンチェッロで未来を拓くプロジェクト」を開始した。レモンチェッロとはレモンのお酒のこと。新たな地域の名産品に育て上げるべく島外の人たちと共にレモンの苗木を植えてレモンチェッロを作る。

さらに「100年後の地域のために今できること」をコンセプトに掲げて「おん宿 古今せとうち」という一棟貸しの宿をオープンする。貸別荘感覚の宿で食や温泉を通じて地域と関わりながらゆったりと過ごすことができる。すでに完成した一棟の内観を見せてもらうと和モダンで洗練された雰囲気。キッチンから露天風呂まで備えている。「地域全体が一つのホテル」という考え方も実に松嶋さんらしい。

個性豊かなジャムとレモンの丘、そして古民家を利用した宿。瀬戸内ジャムズガーデンが形にしてきた夢とその先の未来に目を向けながら、かつてパリで松嶋さんが抱いた高揚感もこのようなものであったかと感じた。

瀬戸内ジャムズガーデン

〒742-2804 山口県大島郡周防大島町日前331-8 地図を見る

TEL/0820-73-0002
営業時間/10:00~17:00
ジャム販売定休日/水
カフェ定休日/水木

3月~11月の土日祝日と夏休み7月20日ごろから8月末日までは17:30まで営業

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